願うなら、きみが






だけどきっとひおは、俺がひおを自分の妹と重ねて見ていると思っている。確かに最初はそうだったかもしれないけれど、今は違う。

ひおだから、やさしくしたいしずっと笑っていてほしい。今はそればかり思っている。



「それでなに、まさか告ったの?」

「違う」

「なら何をそんなに考えてんのよ」

「……ていうか俺、まだなんも言ってないんだけど」

「言わなくてもわかるわ。お前が陽織ちゃんといる時の顔見てれば誰にでも」

「……」

「違うなら否定すれば?」



仁に対して嘘をつくことはしたくなかったので、ノーを突きつけることはしない。ただ、肯定するのも気恥ずかしい。

誰かに自分の好きなひとについて話すのって、こんな感じだったっけ。仁がにやにやしてるのも、言いにくい要因のひとつなのだけれど。



「はー……むかつく」



結局イエスとは言わなかった。だけどこんなの肯定したことと同義である。ていうか俺、仁に気づかれてしまうくらい顔に出ていたのだろうか。

ひおにはバレていないだろうけれど、仁でそうならたぶんあーちゃんにはバレている気がする、なんとなく。


それはやばいなぁ、なんて思っている俺に対して仁は、まだまだ聞き足りないと、何かを期待しているような眼差しを向けてくる。



「で?」

「でって……べつに、なんもないけど」

「けど?」



全て疑問形。こいつ、何かを言うまで逃がしてはくれなさそうだ。べつに仁だからいいんだけれど、正直今めちゃくちゃ顔が熱い。

恥ずかし。小学生かよ俺。



「……どうしたらいいかわかんないだけ」



もちろんこれが全てではない。全部を話すということは、俺が知っているひおのことも全部話すことになる。それだけは避けたかった。だってきっとその中には、ひおが俺にだから話してくれたこともあるはずだから。