願うなら、きみが






だけど、星谷くんはよくわかっているはずだ。

どうして好きなのか、どうしてやめられないのか。それを上手く説明できる言葉がないことぐらい、いちばんよく知っているはずだ。



「……ねぇ、八代」

「うん?」

「どうして、好きになってくれたの?」



なのにそんなことを聞いてくるのは、少しでも私に興味があるからだって、そう勘違いしそうになる。

でもわかっている、違うって。


前に私も星谷くんに聞いたことがある。先生のどこが好きなのかって。それは、知りたかったからだ。星谷くんのこころの中を。

どんなふうに、先生を好きなのか。


だけど星谷くんは、違う。わかっている。本当に、〝どうして?〟って思っているだけだ。


本当は言いたくない、というか、言いにくい。だって、星谷くんを好きになった始まりを話せば。



「どうしてとか難しい……けど。なんかね……うん、先生のことを見てる星谷くんを見てたら、先生のことが羨ましくなっちゃって」

「え……?」



どうしたって、先生に結びついてしまうから。

私のこの気持ちは、星谷くんが先生のことを好きじゃなかったら、もしかしたら生まれていなかったかもしれない。


わからない、そんなことは誰にも。だけどそうかもしれないと思えば思うほど、なんだか情けない気になって、何かが胸に込み上げてきそうになる。



「……いつも教室で静かな男の子が、ひとりの女のひとを見る時だけ、なんだかあつくて、柔らかくて。私もその目にそんなふうに見られたいなぁって……うん、きっかけはそれかなぁ」



だけど間違いなく、私はあの瞬間に恋に落ちた。恋をして、嬉しいも寂しいも味わった。



「……そっか」

「はは……恥ずかし……」

「……ありがとう」

「え?」

「いや、ごめんばっかりで、言えてなかったなって」



それでいて、星谷くんがこうやって言葉ををくれるから。



簡単に、溢れてしまいそうになる。