こうしてドキドキしてしまうのは、胸が苦しいのは。
「ありがとう……それで、休みの間に考えてたんだけど……」
「うん」
「……好きの気持ちをすぐに消すのは難しい、んだよね」
「……うん」
「その、なんていうか……今も好きなわけ、普通に」
「、うん」
「だから……えっと……」
気持ちがまだ、胸の中に形を残しているからで。
先輩と話をしたあの日から考えた。諦めるしかないと思っていたのに、新しい選択肢が生まれた。
無理に消す必要なんてなくて、こころのままにいればいいんだって。先輩はそう言ってくれた気がした。
だけど断られたのにまだ静かに内緒で好きでいるのは、星谷くん的にどうなのだろうと。それを考えてムズムズするくらいだったら、それすらも全部伝えてしまおうと。
そのために今、私は星谷くんと向かい合っている。
「……やっぱり友達やめたい?」
「いや、違くて……! その、そんな気持ちのままだけど、星谷くんと普通に話したいなって思ってて……それでも大丈夫かなって……」
この瞬間でも思うよ、振り向いてほしいって。それが難しいことも知っているし、このままじゃ届かないこともわかっている。
それでも私は、私の中に生まれた温かいこの気持ちを、まだ大切にしたいんだ。
「そんなの……大丈夫に決まってるよ」
その言葉を聞いて、安心感で一気に胸がいっぱいになる。思わず星谷くんの方へ顔を向ければ、ふたつの瞳は逸れずに私を見ていた。きっと、ここに来てからずっと。
星谷くんは何を考えているのだろう。だけどたぶん、私にくれた言葉たちは全部本心なのだと思う。
そう思うのは、今までずっと星谷くんのことを見てきたからで。
「よかった……それだけ言いたくて」
「……でもさ、八代」
「うん……?」
「俺は八代にそんなふうに想ってもらえるほど、いい奴じゃないよ」
そしてきっとそれも、星谷くん自身が本当に思っていることなのだろう。


