あの日、神川(かみかわ)に初めて会った瞬間、なんてかっこいいんだろう、って思った。
顔だけじゃなくて、頭もよかった。
そして、おもしろくて、時々やんちゃで、そんな性格もいいな、って思った。
そして、気づいたらすごく好きになっていた。
毎日のように神川に会いたかった。
塾がない日は気分があまり上がらなくて、
一日中神川のことを考えた。
双子の兄、冬和(とわ)に心配されるほど、
私は神川が大好きだ。
でも、神川は志望校を教えてくれなくて、
秘密主義で、
塾を卒業したら、
会えなくなるんだろうな、
って時々寂しくなった。
だから、神川と同じ志望校別コースになって、
同じ清水学院が第一志望なんだ、
ってわかって、すごくうれしかった。
冬和は違うコースだったから、
邪魔されることなく話せて、
毎日塾に行きたくなったし、
塾の時間を延ばしてほしいとも、思った。
それぐらい、大好きだ。
塾の最後の日。
卒塾してもまた会おうと、
神川と約束をした。
大好きなだけに、
飛び上がりたいほどにうれしかった。
二人とも清水学院を志望していたから、
中学でもきっとまた笑いあえると思った。
それなのに。
神川は入試に、
三回ある入試に、
全部落ちた。
第二志望にも、
落ちた。
そして私は、
受かった。
なんで、
と叫びたかった。
ずっと一緒に頑張ってきたのに。
模試だって安全圏だったのに。
なんでなんだ。
自分は合格して浮かれていただけに、
入学して神川がいないことを知ったときの衝撃は、
とてつもなく大きかった。
入学式の日、
組み分けの紙を渡されて、
まずはみんなのように、
自分の名前を探した。
白石(しらいし)夏緒(なお)」という私の名前を、
三組のところで見つけて、
神川も同じクラスだったらいいな、とすぐに、
「神川(りょう)
という名前を探した。
それなのに。
一組から六組、
何回探しても神川の名前はなかった。
その代わり、
ずっとクラスの最下位だった、
竹下(たけした)(みな)()がいた。
知り合いがいる安心感と、
なんで神川がいないのか、
という泣きたい気持ちが湧く。
それだったら。
私は、意地でも神川を探して出してやろう。
そう思う。
神川にとって、
もし迷惑だったとしても。
私は絶対に神川を見つけ出して、
何で落ちたのかと問い詰めてから、
大好きだと告げようと、
そう思った。
そして、卒塾してからも会うという、
神川との約束を果たすのだ。