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「え…………動物園?」


「そう」


「……律が誘ったの?」


「そう。
タクマのアドバイス通り、ちゃんと要望伝えたんやで?
『行きたい』って」


「えーっと……それが、動物園?」


「……なにその、信じられんみたいな顔」


「いやだって……小学生の遠足?
付き合ってる男女なら、まだわかるんだけどさぁ……」


「…………しゃーないやん。
で、デートみたいなん、生まれて初めて誘ったんやし……。
……どこ行けば正解か、分からんかったんやもん」


「てか、そもそもさぁ……。
美紅ちゃんに、デートって伝わってんの?」


「…………"デート"とは、言うてない、けど……」


「ダメじゃん。
あの日、あの勢いで、告白くらいしてくると思ってたのになぁ……」


「俺も、しちゃうかと思ったなぁ……」


「なんで踏み止まってんの」


「だってさぁ……なんかズルいやん。
失恋したばっかの相手に、告白なんて」


「はぁ……律らしい理由」


「それ、褒めてる?」


「で?どうやって、こっから進展してくつもりなの?」


「うん。どうすればいい?」


「…………丸投げじゃん」


「いやー、関係変えようと思ったことないからさぁ……
今更、なにをどうすりゃいいのやら」


「うーん……。
じゃあもうイチかバチか……
当日に『これはデートだよ』って言ってみれば?」


「えー……それで何か、変わるんかな?」


「さぁ……。
何が響くかなんて、本人にしかわかんないじゃん?」


「まぁ、そうよなぁ……」


「とりあえず。
やれるだけやってみなよ。
ダメだったらまた次を考えればいいんじゃない?
急がなきゃいけない理由、特にナイんだし」


「……うん。そうやな。
焦る必要、ないもんな」


「そうそう。がんばれ、律」


「ありがと……あ、せや。
タクマ、あれからコンタクトどうなん?大丈夫?」


「あー……うん。
あれは、気にしなくていいんだってば」


「もう戻さへんの?メガネに」


「……律が言ったんじゃん。
卑屈メガネ時代の僕にさぁ……
『素顔の方が、とっつき易いな』って」


「ひ、ヒクツメガネ……
って、よくそんな昔のこと覚えてるなぁ」


「はは……うん。
何が響くかなんて、わかんないよね。
ほんとにさ」


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