転生治癒師の私が第二王子を攻略してしまった件について


 エミリーがやってくる時間だ。
 俺はソワソワしながら資料をまとめていた。お付きのメイドは紅茶を淹れる準備をして待機してくれている。
 今日の茶葉と茶菓子は俺のおすすめを用意した。エミリーも気に入ってくれるといいな。
 ドアがノックされ返事をすると、扉の向こうから現れたのは、エミリーではなくレティシアだった。
「アルバート様!」
「レティシア? 何の用だ?」
「じゃーん! 栄養ドリンクを届けに来たわよ! それよりも私とお話ししましょう?」
 レティシアはそういうと栄養ドリンクをメイドに押し付けた。微笑みながらレティシアは俺のデスクの前へとやってくる。
「エミリーは?」
「忙しいからってお願いされたの。ねぇ、私と話しましょうよ」
「……君と話すことはない。すまないが、忙しいんだ」
「嘘ね。この時間はあの女と話すために空けているんでしょう。お付きのメイドだって紅茶を入れる準備をしているじゃない。どうして私はダメなのよ」
「…………分かった。少し話をしよう。話をする前に栄養ドリンクを飲んでもいいか?」
「ええ」
「あの、コップにお入れしますね」
 メイドが栄養ドリンクの蓋に手をかけると、目を見開いた。何かあったのだろうか。それを聞こうとする前にレティシアは慌ててメイドから瓶を取り返す。
「余計なことしないで。返しなさい」
「は、はい」
 慌てた様子でメイドから栄養ドリンクを奪ったレティシアは瓶の蓋を開け、私に差し出した。
「はい、どうぞ。召し上がれ」
「……お前が作ったわけじゃないだろう」
「いいじゃない」
 呆れたため息を吐きながら、俺は栄養ドリンクを一気飲みする。
 あれ、いつもと味が違う。少し、苦い。俺が苦いのを苦手だと言ってから甘くしてくれていたのに……。
 途端に吐き気が込み上げてきて、慌てて手で口を押さえる。咳き込みつつ吐き出したのは血だった。
「きゃあああ! アルバート様!」
 頭がクラクラして倒れ込んだ俺を支えたのはレティシアだった。どこか勝ち誇った笑みを浮かべるレティシアを不審に思いつつも、俺の意識は遠のいていった。