転生治癒師の私が第二王子を攻略してしまった件について


「二年前、功績がやっと認められて軍のことに口を出せるようになったんだ。そのとき、真っ先に軍の食事の改善に取り組んだ。戦う兵士の食事が貧しいものだと戦果が落ちるという記録も出して説得した」
「そのおかげで今があるんですね。ありがとうございます」
「俺としてはもっと改善したいがな」
「ふふ。これからも期待しています」
「待っていろ。もっと美味いものが食べられるようにするから」
「ありがとうございます」
 紅茶を一口飲む。この味がいつもの味になる日も遠くないかもしれないと思うと嬉しい。私は頬が緩むのを抑えきれなかった。すると、アルバート様はじっと私を見つめてきた。なんだろうと思って首を傾げると、アルバート様は慌てた様子で目を逸らした。
「あ、えっと、今日は君の昔話を教えてくれないか? 貧しい村の現状が知りたい」
「わかりました。そうですね、私は父親が幼い頃に死んでしまったので、言葉を話せるようになってすぐに畑の手伝いをしていました」
「そんなに小さくてもできることがあるのか?」
「はい。畑に種を蒔いたり、雑草を抜いたりしていました。もちろん、大人に比べたらできる量はずっと少ないですけど、それでもないよりマシなので頑張っていましたよ」
 力こぶを作ってみせると、アルバート様に苦笑された。これでも普通の兵士くらいは荷物を持てるのにと思いつつ、手を下ろす。
「そうか。俺は第二王子として生まれて魔王軍を倒す戦力になることが決まっていたからな。剣術ばかりやらされていた。でも、第一王子と遊んでいて大怪我をしたときに受けた治癒魔法がものすごく痛かったから戦地に行きたくなくなってな……」
「幼い頃に治癒魔法を受けるのはかなり辛いですよね」
 想像するだけで辛い。きっと幼い頃のアルバート様にとっては想像を絶する痛さだっただろう。戦地に行きたくないと思ってしまうのも仕方がないと思う。
「ああ。戦いたくなかったから、戦術ばかり勉強していた。だが、剣術の先生に剣の才能を認められて、訓練の時間が増えるばかりだった」
「それは良いことですけど、アルバート様にとっては辛かったですよね」
「そうなんだ。何度も自分の運命を呪ったよ。なんで二番目に生まれたんだって。のほほんと領地に残っている兄さんが恨めしく思うときだってある。……これは秘密だぞ?」
「もちろんです。誰にも言いません!」
「君は口が堅いとエドワードから聞いている。初めて、他人にこの話ができた。なんだか、少し楽になったよ」
「それは良かったです」
 ほっとした顔をしているアルバート様を見て、鼓動が跳ねた。アルバート様の一挙一動にこんなにドキドキするのはなんでだろう。もしかして、これが恋というやつなのだろうか。しかし、まだ出会ってすぐなのにこんなに簡単に恋に落ちるものなのか? 前世でも恋愛経験ないからわからない。
 でも、アルバート様のことは嫌いじゃないし、むしろ好きだ。やっぱり、恋?
 私の頬は一気に熱くなる。
「エミリー?」