「そんなに緊張するな。尋問するわけじゃない」
「えっと、どんなお話ですか?」
「君のことを教えて欲しいんだ。素晴らしい治癒魔法を編み出した君のことがもっと知りたい」
「わ、わかりました。何が聞きたいですか?」
おずおずと伺うような視線をアルバート様に向けると、アルバート様は少し考えてから口を開いた。
「そうだな。君はいつから軍にいるんだ?」
「十歳のときに治癒魔法が使えることがわかって、エドワード様に師事しました」
「十歳か。親と離れて寂しくなかったか?」
「寂しかったですけど、それよりも自分の可能性を広げられることとお金が稼げることが嬉しかったです。うち、貧乏な農家なので……」
「……そう。そんな中、あの治癒法を編み出したのか?」
「はい。エドワード様に色々教えてもらっている中で、こうしたらいいんじゃないかというアイデアが思い浮かんだんです。それをエドワード様に話したら、実験などを手伝ってくださいました。初めて母を治癒したときに母が倒れてしまったのが悲しくてなんとかできないかと思っていたので、成功したときは嬉しかったです」
「それはすごいな。君の治癒魔法は合理的で素晴らしい」
アルバート様は目を輝かせて私を見つめた。鼓動が跳ねる。顔が熱くなるのを感じて両手を頬に当てた。すると、彼は首を傾げる。
「どうした?」
「そんなに真っ直ぐ褒められたのは初めてで、少し照れます」
「照れている君も可愛いな」
「へ?」
驚いて目を丸くすると、アルバート様は笑みを深めた。私の鼓動はますます早くなる。さらっと、そういうことを言うのはずるい。私は緩む頬を引き締めながら、両手で胸の前を押さえつけた。そうしないと鼓動が収まらない気がしたからだ。
「容姿を褒められたのはあまりないなので、びっくりしました」
「そうか? 大きなアンバーの目も、リスのような可愛らしい顔立ちも、セピア色のショートヘアも可愛らしいじゃないか」
「髪型を褒められるとは思いませんでした……」
女性は皆髪を長くするのが当たり前のこの時代に、私は軍に入ってから長かった髪を切った。それからずっと、肩につかない程度のショートヘアを維持している。それを男みたいだと貶されることはあっても褒められたことは一度もなかった。
それなのにアルバート様はなんてことのないような顔をして続けた。
「髪が短くても可愛らしいと思うが……。それに、きっと君のことだから、何か訳があるんだろう?」
「軍で水は貴重なので、自分の髪を手入れする分の水を減らしたいと思ったからなんです」
「実に合理的だな。そんなところまで軍に尽くそうとする君は素晴らしいよ」
アルバート様は優しい笑みを浮かべた。直球で褒められて、私の頬はますます熱くなるし、ドキドキが止まらない。自分の些細な頑張りを認められて胸がポカポカする。
「ありがとうございます。嬉しいです」
