「は、はい」
慌てて顔を上げると、アルバート様が心配そうな顔をしてこちらに左手を伸ばしていた。転んだままだった私はありがたくその手を取り、立ち上がる。
「大丈夫か? レティシアが失礼なことをしてすまない」
「いえ、誤解されてしまったみたいですし、あとで謝罪してきます」
「気にすることはない」
「でも、エドワード様から忠告されましたから……」
「……なるほど」
アルバート様は苦い顔をして、ため息をついた。
「エドワードが忠告するくらいなのだな、レティシアは……」
「……はい」
「そうか。治癒、助かった。本当にありがとう」
「いえ。当然のことをしただけです。私は他の兵士の治癒をしてきますね」
「ああ」
「動けるからといって、くれぐれも右腕は動かさないでください」
私が念を押すように言うと、アルバート様は微笑んだ。月がほんのり輝くような笑みに私はドキドキする。
「わかった。ありがとう、エミリー」
「……失礼します」
一礼してアルバート様の前から立ち去りつつ、この胸の鼓動はなんなんだろうと頭を巡らせる。しかし、思い当たるものは見つからなかった。
それから兵士たちを治癒して回り、すべて終わった頃には朝日が昇っていた。それほどまでに激しい戦いだったのだ。幸いなことに死者は出なかった。私はエドワード様に報告をしてから眠りについた。
