窓際の真ん中の席。
窓からは海が見え、それはそれは絶景で見慣れた風景。

席替えをしても高い頻度で窓際を当てる私に彼はよく『羨ましい』と言っていた。


「……〜〜で、ここを訳すと、……」


英語の先生の呪文のような言葉を聞き流しながらボーッと窓の外を眺めた。




────『僕、海好きなんだよね』




いつかの彼の声がまた頭の中で響く。
彼の声も姿も、まだ私には刻まれているというのに彼の姿はもうどこにもない。

確かに掴んでいたのに。
いつの間にか居なくなるような雰囲気を彼はずっと漂わせていた。




────『ばーか!僕が言ってるのは海の事じゃないよ、海の事だから!』




いたずらっ子のように笑って、分かりきっている私の反応を楽しむようにニヤニヤ笑っていたのが懐かしい。

…もうすぐ、1年が経とうとしている。
周りは平然と変わらない毎日を過ごしていて、私だけが置いていかれているみたいに疎外感を感じる。

空人だってそうだ。
なんだかんだ平気そうで、普通で気に食わない。
私は居ないと分かっているのについ無意識に彼を探してしまうというのに。