「海!お前また俺を置いて行きやがって!」


別のうるさいのが来た…。
そして朱莉に気付いた空人はどんどん表情が歪んでいく。


「なんで鹿嶋がいんだよ」

「あはは、同じ学校で同じクラスだからねー」

「その上私の友達」

「どんまい。私だってあんたと一緒なの嫌なんだから」


朱莉は空人の肩をトントン、と叩きながら鼻で笑い上靴に履き替え先を行く私を追いかけて来た。


「てかさぁ、そろそろ私らも進路決めないとだよね〜」


廊下の隅で歩きながら勉強している真面目くんを見て思い出したかのように呟いた。


「大学に進学する事は決めてるけど、まだ何も決めてないわ」

「県外出るの?」

「…まだ分かんない」


全てを忘れて県外へ出たら少しは楽になるだろうか。

朱莉と進路の話をしながら教室のドアを開けると、スっと空気が変わり少しの視線を感じる。
そしてわざとらしく優しく微笑んで「おはよう」と言われた。

…まだ、気を使われている。