うみに溺れる。



ごめん、と謝ってもその言葉は雫玖の体を通り抜けるみたいに消えていく。
そういえばあの時も謝りに行ったはずなのに結局謝らないまま仲直りしていた。

いつもそうだったから。

家族みたいに謝らなくてもいつの間にか仲直りしていていつの間にか普通に笑いあっている。
“ごめん”なんて言葉をハッキリ言ったのは久しぶりだった。


「…んっ?空人?あれ、部活は?」

「…あ、」

「えっ、もうこんな時間か!起こしてよ!」

「声掛けたけど、」

「嘘、全然気付かなかった」


横にいる雫玖の視線が痛い。
海はそれに気付かずに構わず話しかけてくる。


「あのさ、私…」

「海、もう帰ろう。暗くなってるしいい加減帰らないと」

「え?あ、うん。空人、今度話したい事あるんだけど」

「っ、また今度でいい?」

「え?うん、いいけど。どうしたの?顔色悪いけど、具合悪い?」


熱でもあるの?と俺に向けて伸ばされた手は雫玖によって遮られた。


「「…………」」

「ちょっと、雫玖?」


無言のまま雫玖は海の手を引いて教室を出て行った。


今まで築いてきた絆が壊れていく音がした。