うみに溺れる。



海の事が好きなんだと気付いてしまった俺は今まで以上に2人と一緒に居る事が辛くなってしまった。

それとなく距離を置こうとしても、雫玖から「どうしたの?」と気にかけられる。

…正直放っておいてほしい、というのが本音だった。


ある日の放課後、部活終わりに忘れ物をした事に気付いた俺は教室に戻った。
誰も居ないはずの教室に、海が机に突っ伏して眠っているのが見えた。

もうだいぶ時間が経っているのにまだ残っていたのか、それとも寝落ちしたのか。
周りを見ても雫玖の姿はなく、本当にどうしたんだろうと思って近付いた。


「おい、海。雫玖は?つかなんでお前残ってんの?」

「んん、」


はらりと前髪が揺れ、しっかり眠っている海に呆れつつも雫玖にメールした。

《今どこにいんの》、っと。

よく見ると海が枕にしているのはテキストだった。
珍しく勉強してたのか、やっぱり寝落ちしたのだろう。
ミミズみたいな文字が、眠気に抗った証としてノートに残っていた。