うみに溺れる。



先輩は呆れたように笑って「すぐ近くに居たら仕方ないか」と言った。

彼女と海を比べるのも、いつだって頭の中に海がいるのも、このモヤモヤした気持ちも全部…。


「俺が、海を好きだから…?」

「どんだけ鈍感なんだよ」

「…や、でも今更気付いたとしてももう意味無いんで」

「なんで?海ちゃんに“振り向いてほしい!”とか“自分のものにしたい!”とかいう気持ち湧かねぇの?」

「…人の幸せ踏み躙ってまでは、」

「おいコラ」


ブブッとスマホが震えた。
スマホを見ると雫玖からで。


《空人今何処にいるの?》
《お昼食べないの?》


そんな内容だった。


「もはや気持ち悪いまであるな」

「え?」

「空人が逃げないように“幼なじみ”っていう枠に囲って監視してるみてぇ」

「監視、」

「ま、お前がいいならいいんだろうけど。第三者から見たらお前らはなんか変だぞ」


言葉では上手く言えない違和感。
今までと違う感じ、としか言えない。

先輩は食堂行ってくる、と去って行った。