うみに溺れる。



「でも空人さ、」


焼きそばパンをもうひと口齧り、先輩を見ると真っ直ぐに俺を見ていて動揺した。


「それ、本心?」


ドキッとした。
その言葉に誤魔化すように笑って。


「本心ですよ」


先輩は小さくため息をついて、近くにあった古い椅子に座った。


「俺この前3人で帰ってるとこ見かけたよ」

「へぇ」

「お前、1歩後ろ歩きやがって。そこまでして一緒に居る理由ないんじゃねぇの?」

「……雫玖が、俺と離れたくないって言うから」

「はぁ?自己中すぎんだろあの野郎」

「俺らにとって3人一緒は当たり前なんですよ。だから、多分急に俺が距離取るのが嫌なんだと、」

「相変わらず嘘が下手だな、お前」


ゴンッと頭を小突かれて座っていたコンクリートに反射的に手を着いた。



「お前も、海ちゃんの事が好きなんだろ」



先輩のその言葉に時が止まった気がした。

俺が?海を?


「…そりゃ、好きですけど」

「違ぇわ!幼なじみとしてじゃなくて、恋愛感情で!!」

「何、言って…」

「2人見てるお前、めちゃくちゃ辛そうだよ。俺の勘違い?」

「いや、いやいやいや…。絶対ありえないですって」

「なんでだよ。…じゃあ、2人が付き合った時なんとも思わなかったのかよ」

「それは、」


だってあれは、仲間外れにされたように感じたから…。