うみに溺れる。

***


「海、また寝坊かな」

「っぽいな、全然出て来ねぇ」


昔から朝に弱い海を俺達が迎えに行く事は毎朝の日課になっていた。
大体しばらく待つ羽目になる為、雫玖も俺も逆算して早めに家を出る。


夏から時間は流れいつの間にか冬になった。
相変わらず2人は続いていて仲も良さそうだしそれなりに2人で出掛けているようだった。


「っごめん!お待たせ!!」

「おっせぇわ、馬鹿」

「ごめんってば!」


髪を巻いてメイクする時間があるならもっと早く家を出れるだろうに。

前を歩く2人の背中をボーッと眺めた。
雫玖はそんな海に「今日も可愛いね」と恥ずかしくてむず痒くなるような事を海だけに聞こえるような声で言っていて、当の本人は嬉しそうに照れていた。


…なんだこれ。モヤモヤする。


やっぱりこの気持ちは変わらない。
どうしてかイライラして、モヤモヤして。
幼なじみである2人が幸せなら俺も嬉しいし、別にはぶかれているわけではないのに。