うみに溺れる。



「あ、ちなみに俺もパスで」

「はぁ!?お前はなんでだよ!」

「単純に気が乗らないです」

「お前なぁ!高校生なんて一瞬なんだぞ?一瞬で青春終わっちまうぞ?」

「まぁ、そん時はそん時っすね」


じゃ、と先輩と別れ教室に戻る途中に昔を思い出した。


今まで、彼女がいなかった訳じゃない。
何人かと付き合った事はあるし、好きになった事もある。
…でも毎回、上手くいかなかった。



『空人はいつも御厨さんの事ばっかりだね』



そう、よく言われた。正直無意識だった。

毎回毎回。鬱陶しいくらい頭に浮かぶ。
そのせいで彼女からは『本当に私の事が好きなの?』とも言われるようになった。

確かに好きなのだ、好きなのに。
…どうして、海の事ばかり。

いつも振られるのは俺で、それをを慰めるのは雫玖。
そんな俺らを少し離れた所から見守る海。


「あっ、空人ー!今日久しぶりにファミレス寄って帰ろー!!」


教室に入るなり、海は俺にそう言いながら近付いてきた。