うみに溺れる。



「僕ってそんなに存在感ないかな」

「そんなんじゃねぇけど、」

「色白だから?来年の夏は焼いてみようかな」

「いや、お前肌弱いんだからそんな事したら地獄見るぞ」

「そうだった、どうしよ」


長袖の服の袖を捲って露になった雫玖の肌。
確かに色白で傷一つなく綺麗な腕。





────『っ、海には言わないで』





あれは確か、中学2年生の時だった。
あの時も雫玖には何も伝えずに家に行った。
その時に家の中から怒号と皿かガラスが割れる音が聞こえた後、飛び出してきた雫玖とぶつかったのだ。

それはまだ、雫玖のお父さんが生きていた時の話で。



『お前、その痣…』

『っ、海には言わないで』

『はっ?』

『お願い空人、この事誰にも言わないで』



雫玖のお父さんはDVの常習犯だったらしい。
いつだって優しい親父さんしか見ていなかったから、雫玖から話を聞いた時は心底驚いた。
それと同時に人は見かけによらないんだなと子供ながらに理解した。