うみに溺れる。



そういえば、こんな風に雫玖の横顔を見つめたのは初めてだ。
どちらかといえば綺麗な顔立ちをしている雫玖は、お母さんに似たのか綺麗とか美人とかいう類で。

その姿に、呆気に取られていると不意に雫玖の視線がこちらへゆっくりと向いた。

何も映さないような、真っ黒な目。

ゾクッとした何かが背中を通った。


「……あれ、空人?どうしてここに?」

「ぇ、あ、いや…。あ、俺さっきから雫玖の事呼んでたんだけど、」

「あ、ごめん、全然気付かなかった」


さっきまでの異様な雰囲気が嘘かのように雫玖はいつも通り優しく微笑んだ。


「……てか、ほんとに何しに来たの?僕の事もう見たくないし二度と口きかないんじゃなかった?」


からかうように笑いながらそう言う雫玖に、何か分からない不安が湧いた。


「……雫玖が、消えちゃうんじゃないかって、」

「ぶっ、はははっ!」

「おまっ、何笑ってんだよ!」

「ごめんって。何言ってんだろうと思ってさ」

「…」

「海にもよく言われるよ、それ」


そういえば、そんな事を昔言われた気がする。
小さい頃、雫玖が消えていなくなりそうだと海が泣いていたのを思い出した。