昔はどんなに時間がなくても、少しでも可愛いと思われたくてメイクをして髪も巻いてた。
それが今ではほぼメイクもしなくなったし、髪もストレートのままだ。
「あ、ねぇ海。朝ご飯どうする?」
エプロン姿のまま洗面所にやって来たお母さんは顔を洗う私を見ながら聞いてきた。
「時間ないから今日はいいや」
「そう?あ、じゃあおにぎり作るから食べながら行ったら?」
「えぇ?」
「えぇ、じゃない!食べられるだけでいいから食べなさい!」
以前よりも遥かに食欲が落ちた私を心配してくれているのは十分伝わっている。
どうにかして私が食べたくなるように工夫してくれているのも分かってるし、感謝しかない。
部屋に戻り制服に着替え、鞄を持って1階へと降りた。
食卓に置かれたおにぎりとお弁当箱を鞄に入れ、スマホゲームに夢中の空人を横目に小さく「行ってきます」とお母さんに告げた。
その数秒後、玄関でローファーを履いていると後ろからドタドタとした足音が聞こえた。
「お前さぁ!何先に行こうとしてんだよ、準備出来たんなら言えよ!」
「準備出来た」
「遅せぇわ!せっかく迎えに来てやってんのに…」
「私頼んでないし」
「はぁぁぁあ?」
背後でブツブツ言い続ける空人が鬱陶しく無理矢理ドアを閉め空を仰いだ。
…今日も無駄に天気がいい。


