うみに溺れる。

***


「じゃあ行ってくるからね。お昼過ぎには帰ると思うから」

「うん、」

「行ってきます」


喪服姿のお母さんを一瞬だけ見て布団に潜った。
心臓がギュッと握り締められたようなあの感覚がまた私を襲う。

…やっぱり私は行けなかった。

お母さんもお父さんも何か言いたげだったけど、何も言わずに『分かった』とだけ言われた。


家から誰も居なくなった静けさに耐えられずに、布団から頭を出してスマホで適当に動画を探した。
動画をタップして表示すると、今の気分に似つかわしくない軽快なBGMが流れ出した。