うみに溺れる。

***


あの後、空人は私の代わりに教室にある荷物を取りに行ってくれた。
その間に体育教官室に行き、笹山に早退する事を告げると何か言いたげな顔で「親御さんに連絡しとくな」と言われた。


そして私は今、またあの海に来ている。

岩場になっている所に座り、波の音を聞きながらボーッと水平線を眺めた。
この季節の海は人がいなくて静かで心地よく波の音が聞ける。



『私、夕日が沈む瞬間の海が1番好きかも』

『確かに綺麗だよね。…でも僕は日の出が好きかな』

『日の出?』

『……小さい頃さ、父さんと1度だけ来た事があるだ。日の出の瞬間が凄く綺麗でキラキラしてて、今でも覚えてるよ』

『へぇ!私も見てみたいかも!』

『ふふっ、海早起き出来んの?』

『やろうと思えば出来るし!』

『嘘ばっか』



昔から私は朝に弱く、毎日起きれないのを雫玖は知っている。



『じゃあ、いつか一緒に見よっか?』

『うん!』



未だに日の出の海を見れていない。