死んだ人間が何を思っていたのか、どうしてソレを選んだのか、なんて本人以外誰にも分からない。
────『海!!今、電話があってっ、雫玖くんがっ!!』
頭が真っ白になった。
私の部屋に突然駆け込んで来たお母さんがなんて言っているのか半分も理解出来ていないまま車に乗せられて連れて行かれた病院。
そこに横になっていたのは温もりを失い、動かなくなった雫玖だった。
どうして、なんで。
どれだけ考えても、声をかけても分からないし答えてくれなかった。
「…海、授業、」
「ごめん、早退する」
「おい、」
「ごめん…」
スマホには雫玖が生きていたという証がずっと残っている。
この街の至る所にも残っている。
そのせいでまだ雫玖の気配がするんだ。
メールで送り合うスタンプは私と空人が昔ハマっていたキャラクターで、1人だけ除け者だと嫌がって興味もないのに雫玖は同じスタンプを買った。
────『大丈夫だよ。僕はここに居るでしょ?』
私が不安になったらいち早く察して呆れながらも大丈夫だとよく笑う。
空人が女の子に振られた時も、四六時中傍に居て励ます。
「……会いたいっ、」
「っ、」
もう何度も自覚させられた。
雫玖が好きな海に行っても、家に行っても、どこにも雫玖の姿は見当たらない。
思い出だけを残したまま。

