「だけど、二人ともびしょ濡れだし、このままだと風邪をひいてしまう。懐中電灯とタオルを取ったら、一度着替えよう?」
晴斗の提案に、美咲は素直にコクリと頷く。
そして再び手を繋いで、真っ暗な廊下を慎重に歩いた。
見知った家の中なのに、今は全く別の建物を歩いているよう。
まだ、あの部室の中でジッとしていた方がいいと思えるほど、闇の中を突き進んで行くのは怖かったけど、晴斗はギュッと手を握っていてくれた。
階段下の収納スペースに懐中電灯を見つけて、晴斗はスイッチを入れる。
暗い廊下に一筋の光が差す。
部室で停電になった直後も、携帯電話の明かりでホッとしたように、美咲の心にもホワリと微かな明かりが灯った瞬間だった。
「大丈夫?」
「うん、大丈夫」
美咲の返事を聞いてから、晴斗はまた足を進めた。
脱衣室からタオルを2枚取ると、次は階段を上がっていく。
「懐中電灯は一つしかないから、美咲、先に着替えてきて?」
階段を上がる途中で、晴斗の背中がそう言った。
けれど、そう言う晴斗の服は、美咲の服よりも水を含んでいて、階段を水滴でヒタヒタに濡らしている。
部室にいた時から濡れていた晴斗は今、相当寒いに違いない。
「ううん、晴斗が先に着替えてきて?風邪ひいちゃうよ」
「ありがとう。俺の心配をしてくれて。だけど、美咲だって制服姿のままだし、さすがに寒いてしょ?こういう時、女の子は素直に、男に甘えるものだよ?」
「そっちこそ、こんな時にかっこつけないで!晴斗、部室に来た時から濡れてたじゃない?私は今寒くないし、全然平気だから!」
「だけど…」
「晴斗が風邪をひいたら、また私がお粥を持って行かなきゃならないじゃない?今度こそ、お粥の中に消しゴムが入っていても知らないからね!」

