意地悪な兄と恋愛ゲーム




 美咲は晴斗の胸に身体を預けたまま、晴斗の着ていた上着を握りしめていた。

 闇と雷という尋常ではない恐怖が、震えとなって、身体全体に広がっていく。


「押し入れの中でも、あの日雷が鳴ってたんだよね」と、晴斗は呟く。


 晴斗は傾いていた自分の身体を起こすと、美咲の身体を包み込むようにギュと抱き寄せた。

 晴斗の甘い香りが、何だかすごく懐かしい気がして、胸の奥がキュンと弾ける。


「思い出したよ、全部。ごめんね、本当に。全部俺のせいだ」


「晴、斗…?」


「もう泣かさないって約束する。今度はちゃんと守るから…」


 誓うように言った、低く、艶めかしい声が、耳から脳に響いた。

 そのたった一言で、身体の中を支配していた恐怖心が、嘘のように遠のいていった。


 自分でも信じられなくて、晴斗の胸から顔を上げると、至近距離で目が合う。


 自分を見つめる晴斗の瞳は、いつだって優しい

 再会してからはずっとそうだった。

 もうあの頃の晴斗とは違うのに、どうしてずっと気付かなかったんだろう。


 後悔するように、溜まっていた涙が、頬をつたって流れていく。


 晴斗は指先でその涙を拭うと、囁くように言った。

 

「だから今だけは、このまま俺の中にいてくれる?」