意地悪な兄と恋愛ゲーム




 美咲は、膝の上に乗せられていた晴斗の拳に、自分からそっと触れた。

 この雨に濡れた晴斗の手は、氷のように冷たかった。


 でも、知ってる。

 俯いている晴斗を見て、ようやく気が付いた。


 私を見ている時の晴斗の顔は、いつも太陽のように温かく、そして優しい事。


 どうか今は、もう一度、笑ってくれないだろうか___



「美咲…」


 その時突然、天を割くような大きな稲光が走り、ゴロゴロと地割れのような轟音が響いた。


「きゃあっ!」


 驚いた美咲は、とっさに晴斗の首にしがみついてしまった。
 

「み、美咲…」


 暗闇の中から、突然飛びこんできた美咲の身体を支えきれず、晴斗は後ろへ手をついた。


「……だ、大丈夫?」


「ご、ごめん…晴斗…」
  

 晴斗を自分から押し倒すような形になってしまい、美咲は慌てて離れようするが、悪戯のように二度目の雷鳴。


 美咲はまたしても、叫びながら晴斗の胸にしがみついた。


「ご、ご、ごめん!本当にごめん!」


 今すぐに離れたいのに、そんな意思とは関係なく、身体が雷に過剰に反応してしまい、思うように動いてくれない。



 こ、怖い____