「俺が美咲を嫌いになんて、なるはずないだろ……」
晴斗はそう言って、力なく、床に膝をつけた。
好きだ、美咲の事が好きで好きで堪らない。
だからこそ、今のこんな自分に、美咲に触れる資格なんてない。
晴斗の手に握られた携帯電話の明かりが、側に転がったパイプ椅子を照らす。
晴斗の髪からは雨の雫が垂れて、ザラついたコンクリートの床を濡らした。
そして、膝をつけたジーンズからも水が染み出ている事に、美咲は気が付いた。
目の前の晴斗の身体は微かに上下に揺れていて、呼吸音も速い。
電話は途中で切れてしまったのに、それでもこの雨の中、この場所まで駆けつけてくれたんだ。
「ごめん、遅くなって。側に、居てあげられなくて…」
俯いてそう言った、晴斗の表情はよく分からない。
けれど、晴斗の掠れた声も、濡れた身体も、乱れた息遣いも全部、自分に向けられた晴斗の本当の気持ちだ。
晴斗は今、私の為に傷ついてる……
晴斗が悲しいと、自分まで悲しくなってしまう……
あの図書室の日からずっと、こんな気持ちが消えないんだ____

