晴斗は鍵を開け、部室のドアを勢いよく開けた。
「美咲!」
見慣れた部室の中はまっ暗で、激しい外の嵐とは逆に、シンと静まりかえっていた。
とても人がいるようには感じられないが、美咲は間違いなくここにいるはずだ。
慣れない視界の中、携帯電話の明かりを照らして、美咲の姿を探した。
ガタンと奥の方で小さな物音が聞こえて、ハッとする。
「美咲!?」
晴斗は、椅子や荷物に足をぶつけながら必死にそちらへ向かって駆け出した。
そして、ロッカーと壁の隙間に、小さくなって震える子猫のような美咲を見つけた。
散々泣きはらした目で見上げられた時、堪らない後悔が再び、晴斗を襲う。
「…晴斗、来てくれたの…?」
自分で電話をかけてきたのに、美咲は晴斗が現れた事がまるで信じられないように、目を見開いた。
そして、その両目から、再び大粒の涙がこぼれてくる。
「…晴斗は、来ないって思ってた…。図書室のあの日から、私の事はもう、嫌いになったのかな…って…」
グスグスと、子供みたいに泣かれて、今にも破裂しそうな程、晴斗の胸の奥は強く締め付けられた。
昔、押し入れの中に閉じ込めて、怖がらせて、泣かせて、トラウマになるまで美咲を怯えさせたのは俺なのに、美咲は俺を憎むどころか、必死に俺に助けを求めてきた。
それなのに俺は、こんな夜に一人にさせて、また傷つけて…
一体、何をやってるんだ…と、胸ぐらを鷲づかみにされて誰かに朝まで殴られても足りないくらい、晴斗は今の自分を許せなくて仕方がなかった___

