晴斗はその頃、他校のサッカー仲間の友達の家に一泊で訪れていた。
何ヶ月か前から、その高校と練習試合で一緒になる事が重なり、キャプテン同士、いつの間にか仲良くなった。
「酷い天気だなぁ。昼間の試合の時じゃなくて良かったよ…」
友達が、カーテンを開け、窓の外を覗きながら言った。
「そうだな…」
ゴロゴロと、雷が鳴っている。
強い雨が、窓ガラスに打ち付ける音も同時に聞こえる。
「ねぇ、お兄ちゃん、ずっとここにいるの?これから晴斗君に勉強を教えてもらうんだから出ていってくれない?」
晴斗の隣に座ったのは、その友達の妹だ。
前に訪れた時、今度勉強を教えて欲しいと頼まれていた。
「お前が晴斗に迷惑かけないか見張ってるんだよ」
「迷惑なんてかけるわけないじゃん。私これから猛勉強して、来年、晴斗君と同じ高校行くって決めてるんだから!」
「だから、お前なぁ。先輩に、君付けはおかしいだろ?」
「いいでしょ、別に!受験生の邪魔しないでよ!」
妹の強気な態度に、友達は深いため息を吐く。
「はぁ。悪いな、晴斗。試合で疲れてるのに。しつけのなってない妹で…」
「別に、大丈夫だよ」
「それじゃ、始めようか」と、晴斗はニコリと笑うと、手元の問題集を開き始めた。
その横顔を見て、妹は頬を赤く染める。
「なぁ、確かお前にも妹がいるんだったよな?」
「ん…、そうだよ。親の連れ子だから、血の繋がりはないけど…」
「どんな子?うちみたいに、生意気なんかじゃないだろ?」
妹はキッと兄を睨む。
「いい子だよ。ちょっと気が強いところもあるけど、そこがまたかわいい」
「かわいい、か。さぞ仲が良い兄妹なんだろうな…」
「そうでもない」
「え?」
「俺は仲良くしたいけど、向こうは俺を快く思ってないから。ついこの間も、嫌われたばかりだし」
「晴斗君を嫌う女がこの世に存在するの!?」と、隣にいた妹は思わず立ち上がった。
「俺も意外。お前でも女の扱いに困る事あるんだ?」
「困りすぎて、正直今、もの凄く参ってるところ」と、晴斗は苦笑する。
「ふ〜ん。なぁ、前から聞きたかったんだけど、お前の妹ってもしかして…」と友達が言いかけた時だった。
その友達の携帯が音をたてた。
「あ、お前のうちの方、落雷で停電してるってさ。今、携帯の臨時ニュースに出てきた」
「停電?」
「あぁ。復旧のメドは今のところ、たってないみたいだな」
思わず立ち上がると、妹は不思議そうに晴斗を見上げた。
「晴斗君、どうかしたの?」
美咲が今、家にいる。
一人きりで、本当に大丈夫なのか?
不安が胸を覆った……

