あの時、胸の奥がズキンと裂けるように苦しくなった。
いてもたってもいられずに、晴斗の前から逃げ出していた…。
晴斗に触れられる事が私はずっと怖かったはずなのに、だから晴斗の手を振り払ったのに、どうしてこんなにも胸が苦しいままなのかな___
甘く香る優しい匂い。
同じくらい優しくて、滑らかに動く綺麗な唇。
何度見てもドキドキする、端整な顔だち。
私といると、いつも嬉しそうな瞳の色。
どんな晴斗の表情も仕草も、目を閉じれば鮮明で、いつの間に晴斗はこんなに近い場所にいたんだろうって思い知らされる……。
強引なキスも、しつこいくらいの笑顔も、少し苛立ったような表情も、晴斗は私を見て、ただ楽しんでいるだけだと思っていたのに…
晴斗から逃げ出す瞬間、晴斗の心を、夜空の深い闇の色に変えてしまったのは、まぎれもなく私だった____

