意地悪な兄と恋愛ゲーム



 晴斗は動きを止めた。

 美咲の肩が小刻みに震えている事に、気が付いたからだった。


 その隙に美咲がカーテンから駆け出すと、晴斗は美咲の腕を掴んで引き留めた。


「美咲!」


「……昔、壊したおもちゃみたい?」


 晴斗はハッとして、力を緩めた。

 いつもの威勢を張って怒るような、そんな声じゃなかったからだ。


「心も身体も、こうして縛り付けて満足?」


「美咲…」


「晴斗はやっぱり昔から、何も変わってないんだね…」



 そう言って、美咲は晴斗に振り向く。

 見開いた晴斗の瞳にうつったのは、深い悲しみに濡れて、どうしようもなく苦しそうな、涙を流した美咲だった。




「私はもう、晴斗のおもちゃじゃないんだよ……」


 








 美咲は晴斗の手を振りほどいて、図書室を駆け出して行った。


 一人取り残された晴斗は、側の本棚に背を預けると、苛立ちを抑えきれない様子で、髪を乱雑に掻き上げた。


「…っ」



 5時を前にした図書室は、悲しいくらい、シンと静まりかえっていた____