意地悪な兄と恋愛ゲーム



「ねー、やっぱり誰もいない」


「もう、行こう?なんか、気味悪い…」



 女の子達が去って行く足音が聞こえる。

 美咲はその足音を、包まれたカーテンの中で聞いていた。


 あ、危なかった…


 彼女達が迫ってくる直前、晴斗は、窓際の長いカーテンの中に美咲を引き込んだ。

 なんとか絶体絶命のピンチは回避出来たけれど、現在、二人仲良くカーテンの中で密着中。

 しかも晴斗は後ろから、美咲の腰に手を回し、抱きしめてくる。


 図書室のドアがバタンと閉まると、晴斗が耳元で囁いた。


「これは、お仕置きだよ?」


「な、何の…?」


「俺があの子達の事、苦手って気付いて、わざわざ教えに行こうとしたでしょ?」


 耳がゾワゾワとして、くすぐったい。

 それに、晴斗と距離が近すぎて胸がドキドキする。


「これもミミちゃんと同じで、昔の仕返しのつもりなの?」


「…っ」


「美咲がそんな意地悪するなら、俺もそれ以上の意地悪をするよ?」


「も、もうしない。あの子達行ったから、離れてよ」


 この状況が恥ずかしくて、すぐに逃れようとしたのに、腰はがっちりと固定されたままだ。


「だめ…」


 そして晴斗は、美咲の小さな耳を甘噛みする。