意地悪な兄と恋愛ゲーム



 今までのキスとはまるで違う。

 魂までもが持っていかれてしまいそうな、激しいキスだった。


「…っ……」


 優しいフワフワとしたキスしか知らなかった美咲は、頭の中が真っ白になった。

 次第に呼吸の仕方も分からなくなって、喉から息がもれるような声が立て続けに出てしまう。


「んっ…んんっ…」



「ねぇ、本当に、何か音がするんだけど…」


「こ、怖いこと言わないでよ……」


「ね、どうする?帰る?」


「もうちょっとだけ、見てみよ?」


 そして、躊躇するように止まっていた複数の足音が、再びこちらへ向かってくる。



 駄目だよ、晴斗……

 いい加減、離れて……


 本当に、見られちゃうよ……


 
 美咲が目を開けて必死にそう訴えているのに、晴斗は苦しげに目を伏せたまま、キスをやめようとしない。

 端整な顔は角度を変え、薄い唇は何度も、美咲の唇を貪るように吸い付いてくる。


 やがて、美咲の唇の隙間から、晴斗が舌を捻じ入れてきた。

 口腔内を晴斗が熱く侵してくる、その初めての感触に、美咲は固く目を閉じた。


「んぅっ……」


 な、何コレ……

 深くて、熱くて、おかしくなりそう___


 一体、どうしたらいいの?



 そしてついに、女の子達が、美咲達のいる本棚の列に差し迫った。


 あぁ、最悪…

 晴斗と付き合ってるなんて屈辱的な噂が学校中に広まって、明日から私は廊下も歩けなくなってしまうんだ___