「申し訳ないですが、自分で探して頂けますか?」
「だーめ。俺は、美咲に案内してもらいたいんだ。それとも図書委員は、毎日自分の好きな本を読みふけるだけが仕事なの?」
「っ!」
美咲は席を立って、ドスドスと足を鳴らしながら奥の本棚へ歩いて行く。
晴斗は軽快な足取りで、ニコニコと美咲の後について歩いた。
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「天体の本は、ここからここまでですっ!」
「ありがとう。じゃあ、この中から探してみるよ」
「ごゆっくり!」
「閉館は何時?」
「5時です!5時ちょうどに入り口のドアを施錠するので、それまでには必ずお帰り下さい!」
そう吐き捨てて、クルリと背を向けた時、図書室の入り口付近から、生徒の声が聞こえてきた。
「ねぇ。先輩、本当に図書室なんかにいるのかなぁ?」
「先輩どころか、ここ、誰もいなくない?」
複数の女子生徒の声。
美咲達のいる本棚は、図書室の入り口からちょうど、死角になっている場所だった。
「見たって子がいるもん!晴斗先輩、部活のない日は図書室にいるって!」
晴斗先輩?
ひょっとして今、私の隣にいる、あのモテモテ晴斗先輩の事ですか?
けれど、美咲の隣に既に、晴斗の姿はなかった。
「あれ?いない!?」
キョロキョロと見回しながら辺りを探してみると、入り口から一番遠い本棚の陰に、身を潜めている晴斗を発見!

