プイッと、晴斗から顔を逸らす。
「怒ってるの?昨夜また、キスした事…」
「当たり前でしょ!」
晴斗は目を細めて、嬉しそうに口角を上げた。
「人を怒らせてるのに、何でそんなに満足そうなの?普通、ヘコまない?」
「全然。俺に腹を立てている美咲も、めちゃくちゃ可愛いと思ってる」
「変態!見ないで!」
美咲は真っ赤な顔を見られないよう、本で顔を隠した。
「……本、読まないなら帰れば?」
「じゃあ、星の本でも探そうかな」
そう言って、晴斗は一旦、席を離れる。
「はぁ…」
晴斗がこの場を去ったのを確認し、本を閉じ、深くため息をついた。
晴斗といると、一気に疲れる。
それにしても、本も読まずに、ただ座ってるだけって、あの人本当、ここへ何しに来たんだろ?
晴斗が座っていた机に目を移すと、晴斗のスマホが置いてある事に、気が付いた。
「あ、携帯番号……」
普通に聞いたら、絶対に勘違いされそうだし、今ならこっそり、見られるかも……
勝手に人の携帯を見る事に、罪悪感がチクリと胸を刺すが、今はそんな事どうだっていい。
早くこのミッションを終わらせて、この男から一刻も早く距離を置きたい。
じゃなきゃ、私の精神が先に限界を迎えそうだ。
晴斗が側にいないことを確認し、そっと、目の前のスマホに手を伸ばす。
ところが、画面には当然のごとく、ロックがかかっていた。
「やっぱ、駄目かぁ…」

