「その割には、目が潤んでる…」
「うっ…」
が、私が取り繕った生ぬるい平常心はさっそく見破られる。
「どんなシーン?現実に味わいたいなら、俺がいつでも再現してあげるよ?」
「結構です」
「……もしかして、してもらいたい人が別にいる…?」
「えっ…」
「美咲には、好きな人がいるの?」
「今、いない…」
「昔はいたんだ」
「関係ないでしょ?」
「妬けるな…」
「そっちこそ!海外では、何人の女の子達の相手をしてきたんでしょーね!」
「こんなに人を愛しく思ったのは、美咲が初めてだよ」
「っ……」
恥ずかしげもなく、学校でそんな事を言わないでよ。
「でも、美咲は俺よりも前に、本気になった人がいたんだね…」
「晴斗に本気になった覚えは、これっぽっちもないけど?」
「手厳しいな…」と、晴斗は苦笑して、再び美咲を見つめる。
「あの、そんなふうに見られると、全然集中出来ないんだけど?」
「気にしないで?俺を空気だと思って、いつものまま読んでていいから」
空気?
こんなに暑苦しい空気があってたまるか…!

