意地悪な兄と恋愛ゲーム


 

 この歳で、ろくな色恋がないから、きっと欲求不満なのかも。

 いっその事、誰でもいいから彼氏、作っちゃおうかな。


「あ、あのさ、彼氏ってどうやって作るの?」


「は?」


「そろそろ彼氏でも、作ろうかな〜と思って」


「あんたね、ご飯作るのとは違うんだから、そんな簡単に出来るわけ無いでしょ!」


「だ、だよね…」


「美咲ちゃん、ちなみに今、好きな人いるんですか?」


「いない」


「気になる人も?」


「うん」


 真顔で答えると、真美が分かりやすくため息をつく。


「はい、はい、はい。まずはそう言う相手、できてから言いな」

「そうですよ。私達、相談に乗りますから」

「うん。待ってる」


 チャイムが鳴って、美咲は自分の席へ戻った。


 好きな人か…

 中学の時は好きな先輩がいたけど、今の高校に入ってからは恋愛は無縁だ。

 部活も入ってないし、委員会もほぼ一人だし、男子生徒と接点もないのに、好きな人なんて見つかる気がしない。

 誰でもいいと割り切って交際とか、やっぱり面倒なだけだし、私には無理かも。


 でも、もし私に彼氏が出来たって言ったら晴斗はどうするだろう?

 私に興味を抱くのをやめて、私の前からおとなしく去って行ってくれるだろうか?

 そう言えばこのゲーム、もしもどちらかに恋人が出来た場合は、どうなるのかな?




放課後の図書室____



「っ!!」


 読んでいた本から顔を上げると、向かいの席に晴斗が座っている事に気が付いた。

 自分は本を読むわけでもなく、ニコニコと嬉しそうに美咲の顔を見つめている。


「やっと、気付いてくれた?」


「い、いつからいたの!?」


「5分くらい前」


「な、何でここにいるの?サッカーは?」


「週末、他校で練習試合だったから、今日の部活は休み」


 この週末、晴斗は家にいなかった。

 夜は、その他校の友達の家に泊まっていたんだとか……

 おかげで、私は実に有意義な休みを過ごせたけど。


「美咲はいつも、何の本を読んでるの?」


 晴斗が不思議そうに聞いてくる。


「ただの小説…」


「ファンタジー、ミステリー、それとも恋愛?」


「れ、恋愛…」


「へぇ、それを読んでドキドキしたりキュンキュンしたりしてるんだ?」


「別に…」


 本当は、この本のストーリーに、めちゃくちゃ胸を打たれているが、晴斗にだけは知られたくなくて、平常繕う。