「ところで真美ちゃんは、先輩の携帯電話の番号を知って、どうするつもりなんですか?」
桜子は、晴斗の消しゴムを大切そうにハンカチに包みながら問う。
「やっぱり先輩にかけて、直接話したい!とかですか?」
「う〜ん。確かに先輩って、話しかけたくてもなかなか近づけないからね。さっきも中庭で、女の子達がわんさか、先輩に群がってるとこみたし」と真美が呆れ気味に言う。
「あ、昨日、先輩が風邪で休みだったから」と、千晶が気がついて、美咲は首を捻った。
「それ、風邪と何の関係があるの?」
「美咲は全然分かってないね〜。皆、風邪で弱ってる先輩を心配して、手作りお菓子で女子力アピールだよ!」
「はぁ。それまた余計に、体調悪くなりそうだね…」
風邪で一日に休んだだけで、勝手にそんな事になるなんて私なら耐えられないな。
晴斗が少し、可哀想になってきた。
「でも、私は先輩を困らせるような事はしないよ。電話だってかけるつもりないし。ただ、好きな人の携帯番号を眺めているだけで満足なの。先輩とはいつでも、どこでも、繋がっているんだってね…」
晴斗は真美の事知らないから、ただ真美から一方的に繋げているだけのような気もするけど…
「ふぅん…、よく分かんないな」
「で、美咲はまだ、先輩が嫌いなの?」
三人の視線を一斉に感じる。
「この前、先輩を視界の隅に入れるのも嫌がってたでしょ?」
「今もそうなんですか?」
「き、嫌い、嫌い、嫌いだよ!」
「何、その動揺。明らかにこの前と違う」
「うん。その威勢の良さ、逆の意味に聞こえるし」
「…っ」
先日、晴斗にされたキスが、頭から離れない。
思い出すだけで、胸がドキドキしてしまう。
どうかしてる。
本当に私、どうかしてるよ。
晴斗なんかのキスでドキドキするなんて!

