「はい、これ!」


 休み開けの学校。

 美咲は桜子の机に、調達してきた消しゴムを置いた。


「こ、これって、もしかして……もしかしてですか!?」


 桜子の瞳がキラキラと眩しく光る。


「その、もしかしてだよ。晴斗の消しゴムを貰ってきた」


「やーん、嬉しいですぅ!ありがとうございます!みさきちゃん♡」


 桜子は、晴斗の消しゴムに、頬ずりをした。


「先輩が、側にいる気がしますぅー!」 


 机の隅に放置されていた、ただの消しゴムなんだけどね。


「黙って貰ってきたの?」


 横から真美と千晶が加わる。


「そのつもりだったけど、バレて事情は話したよ」


「先輩、どんな反応だった?嫌がってなかった?」


「嫌がってはないけど……」


「けど?」


「その代償がでかすぎっていうか……」


 変わりに私物を要求されるし…

 隙を突いてまた、キスされるし…


「はぁ……」


 少しずつ、自分の中の大切な物を、失っていってる気がする。


「次は先輩の携帯番号、よろしくね〜」


「ズルい。私も生着替えor寝顔、早く…」


「はいはい……」
 


 こっちは、命を削る想いで、動いてるっていうのに……