意地悪な兄と恋愛ゲーム



 気がついた時には、晴斗の顔が目の前に迫っていた。


「は、晴…」


「言ったよね?また俺を煽ったら、同じ事するって…」


 指先で頬に触れられると同時に、晴斗が更に顔を寄せてくる。


「限界なんだけど。本当、可愛すぎ」


「…っ」


 ___拒まなきゃ。

 また、後悔する。


「やめ、て…」


 唇が触れ合う瞬間、美咲は晴斗の胸を押し返そうとした。

 だけど晴斗は、逆に美咲の手を取ると、自分の左胸に強く押し当てた。

 固い胸板の感触に、ドキンと心臓が跳ねた。


「昨日、美咲が言った通り」


「え…」


「演技なら顔色までは隠せない。だからこの鼓動も、演技じゃないって分かるでしょ?」


「晴斗…」


「美咲といると、ずっとここがドキドキして苦しい。全部美咲のせいなんだから、ちゃんと、責任とって…」


「責任…」


「俺の事、満たしてよ…」


 晴斗の唇が触れると、身体の奥がジンと深く痺れて動けなくなった。

 ムギュッと閉ざしたままの固い美咲の唇に、晴斗はほぐすように優しく唇を重ねてくる。


「……っ」


 愛おしむように、何度も何度も繰り返されるキス。

 その甘い愉悦の波に襲われて、頭の中がトロトロに溶かされしまう。
 
 月明かりの下で、美咲の唇を味わう晴斗の表情は、艶めかしい色香に満ちていた。

 その瞳と目があい、心臓が苦しいくらい早鐘を打った。


 酔ってしまう、溺れてしまう。

 相手はこの世界で一番気を許してはいけない、大嫌いな晴斗なのに____


 美咲が精一杯、晴斗の胸を押し返すと、簡単に晴斗の唇は離れた。

 美咲はその隙をついて部屋を飛び出し、隣の自室に駆け込んだ。


 暴走した機械のように、心臓はドキドキドキと激しく動いている。

 晴斗の心臓も、同じくらい速くて、月の光をかき集めたような瞳は、私を強く求めていた____


 どうして?

 晴斗にとってはこんなの、ただのお遊びのはずでしょ?


 晴斗の気持ちが分からない。

 それに、自分の気持ちも。


 大嫌いな男なのに…

 無理矢理キスをされて嫌悪しか感じないはずなのに…


 こんなにドキドキするのはどうして……?



 美咲は、暴れ続ける自分の心臓に手を当てて、きつく目を閉じた____