「急に?俺はあの時、ちゃんと警告したつもりだったんだけどな。俺から逃げなくていいの?って…」
「誰が、あの状況でキスされるって思うの!?玄関で、しかも、今にも倒れそうなくらい具合の悪い人に!」
「確かに体調は悪かったけど、俺は、あらゆる手段を使って美咲を手に入れるって、最初に話したでしょ?」
「くっ……」
「俺、本気だから。風邪をひいて熱があったって関係ない。美咲が俺の側にいたら抱きしめたいし、唇だって奪いたい…」
そう言って晴斗は、窓際に立っている美咲にジリジリと距離を詰めてきた。
ここは、敵の本陣。
美咲にとって、地獄よりも最悪な場所。
そして目の前にいるのは、艶やかな美貌で皆を騙す、この世界で一番意地悪な、悪魔のような兄だ。
ヤバイ…、この状況。
何とかして、逃げなきゃ__!!
追い込まれてしまった美咲は、後ずさる途中で肘に何かを引っかけた。
ガシャンと音を立て倒れたのは、三脚の上に乗っている筒状の何かだった。
「な、何っ?」
晴斗は気がつき、美咲の側でそれを拾うと、手の中のそれを見せてくれる。
「天体望遠鏡だよ」

