お粥が乗ったお盆を手に、階段を上がろうとした時だった。
トントントンと、上から階段を下りてくる足音がして美咲の足が止まる
ゲッ!晴斗だ!
この人と顔を合わせれば最後、という潜在的な恐怖から、とっさに死角になっている壁に隠れてしまった。
晴斗は1階の廊下を真っ直ぐに歩いていく。
もしかして、今からシャワーとか?
今のうちにお粥を置いて部屋を出れば、顔を合わさずに済むじゃん。
急いで2階に上がり、晴斗の部屋に一歩、足を踏み入れた。
部屋の中はベッド脇のランプが着くのみで薄暗い。
もう陽も落ちたというのに、バルコニーに続く大きな窓のカーテンは不思議と開かれたままだった。
お粥を晴斗の勉強机の上に置いた時、美咲は閃いた。
晴斗は今、シャワー中なんだよね?
って事は、部屋を物色できるチャンスじゃない!?
桜子から頼まれていた、晴斗の使っているものを一つ頂戴する絶好の機会じゃん!
不在を狙う空き巣のようで一瞬胸が痛むが、昨日、私が受けた身体的精神的苦痛に比べたら、それはもう、かわいいものだよ。

