「今日は一度も顔を見てないから、心配だわ…」と、ため息を混じらせる母。
「そうですか、それはお大事に……」
嫌な予感を感じ、棒読みで気持ちを伝え、すぐにその場から去ろうとすると…
「だから、このお粥を晴斗の部屋に持って行ってくれない?」
ほら、来た!
この展開、来ると思った!
「ぜぇっったいに、嫌っ!!」
だけど、それだけは、お断りさせて頂くっ!
「そんなに心配なら、お母さんが行けばよくない!?」
「朝から何度も行ってるのよ?だけど、大丈夫って言う声が返ってくるだけで、部屋に入れてくれないの!」
「じゃあ、大丈夫なんじゃないの!?」
熱があっても、平気でキスをしてくるような男だ。
昨日の夜から何千回、何万回、精神が崩壊しそうな程、晴斗を恨んだ。
恋人同士でもないのに、相手の了承も得ず、不意をついてキスをしてくるとは、なんて礼儀知らずで最低な奴!
いや、礼儀とかの問題ではない、これはセクハラだ!
わいせつ罪で訴えてやる!
「晴斗自身、あまり弱いところを見せない子なの。昨夜だって、熱があるのにお風呂なんか入って、本人は平気だって言ってたけど、フラフラだったんだから」
私もショックで、夕飯全く食べられなかったんだけど、そこはスルーですか…?
「年頃の男の子だから、母親に部屋に入られるのが嫌なのよ。だから、歳の近い美咲に、こうして頼んでるの」

