意地悪な兄と恋愛ゲーム



 それは半年前。


 サッカー部に入部する前の、放課後のこと。






「ねぇ、先輩いた!?」


「ううん、いない」


「確かに、こっち行った気がしたんだけど…」


「あ~ん、見失っちゃったぁ~」



 俺は、階段下の用具スペースの隙間で、ジッと身を潜めていた。



「あっちの方、もう一回探してみようよ」
 

「そだね!」


「うん、行こ、行こ!」


 複数の足音が、次第に遠ざかっていくのを耳にする。



「やっと、行った…」


 髪を掻き上げながら、深いため息をつく。


 この学校に転入してきてからというもの、毎日のように、名も知らない女子達との追いかけっこが続いていた俺は、うんざりしながら立ち上がった。