意地悪な兄と恋愛ゲーム



 柔らかな唇が花びらのようにふわりと触れ合う、これは美咲にとって初めてのキスだった。


 その優しい感触に、美咲は何が起こったのか分からず、ただ身体を固くするだけ。


 晴斗は自分の唇を少し浮かせて、その隙間に、「はぁ…」と、甘い息をはいたあと、顔の角度を変えてもう一度、唇を擦り合わせてくる。


 美咲の身体は自然と後ろに傾き、背中に壁がぶつかった。


 な、何これ

 い、息が、出来ない…


「……っ」 


 美咲は、晴斗の胸を強く押したが、晴斗の身体は全く動かなかった。

 反対に、美咲の耳元に手をまわして顔を優しく持ち上げ、更に深く唇を重ねてくる。


「……ん」


 目の前には、晴斗の白くて、少し苦しそうな美貌が広がっている。

 そんな艶めかしい表情に耐えられなくなって、美咲はきつく目を閉じた。


 やがて晴斗は、繋がっていた唇をゆっくりと離した。

 チュッという音とともに、晴斗の顔が離れていく。


 美咲は呆然としたまま、そんな晴斗の顔を、どこか他人事のように見つめていた。




「そういう無防備なところも、バカみたいにかわいい…」



 晴斗は満足そうに、薄い唇の端を上げると「また俺を煽ったら、同じ事するから」と言った。


 そしてもう一度、美咲の頬にキスを落とすと、フラフラと立ち上がり、家の中へと入っていく。



 何が起こったのか全く整理が追いつかない美咲は、まるで石像のように、しばらくその場で固まってしまっていた____