意地悪な兄と恋愛ゲーム



 必死になる美咲を見て、晴斗は突然おかしそうにクスクスと笑った。


「な、何で笑うの?」


「これは、美咲に傘を貸して、少しでも俺に好意を抱かせる作戦だよ。見事に成功したなと思ってさ…」


「え?」


「俺が帰ってきた時、美咲はすぐに逃げたいって顔をした。だけど、傘を貸してくれた俺が気になって、今はこうして思い止まってくれてる」


「そ、それは…」


「いいの?ずっと恨んできた俺に、そんなに簡単に心を揺らしたりして」


「……っ!」


「やっぱり美咲は見ていて楽しい。本当に俺を飽きさせないよね。初日からこんな調子じゃ、一ヶ月もいらないのかも…」


 自分がまんまと晴斗の思惑にはまったと知り、美咲の顔はカッと真っ赤になった。


 そう、これはゲーム。

 雨の日に傘を貸してくれた晴斗の優しさは、私の気持ちを晴斗に向けさせる為に考えられたものだった。

 やっぱり晴斗は、何も変わってない。

 この男は私をからかって、ただ面白がってるだけ。

 そして私はどうしてこうも簡単に、この男の罠にはまってしまうのだろう。


 悔しくて、情けなくて、目尻に勝手に涙が浮かぶのを堪えた。

 晴斗の前で涙なんか見せたら、もっとからかわれるに決まってる。


「私の事、何だと思ってるの?やっぱり面白がってるだけじゃない!」


 今日、サッカーに打ち込む真面目な晴斗の姿を見た時、晴斗の私に対する気持ちが、実は真剣なんじゃないかって感じた。

 そんな事を一瞬でも考えた自分が、本当にバカに思えた。


 美咲の惨めな言葉に、晴斗は笑って「そうだよ」と言った。


「浅はかで単純で泣き虫で、子供の頃から何も変わらず、美咲は笑えるくらい詰めが甘いよね」