意地悪な兄と恋愛ゲーム



「ゲーム?」


「そう、恋愛ゲーム」


 晴斗はベッドの枠に腰かけたまま余裕の笑顔だ。  


「期間は一ヶ月。その間に俺は、あらゆる手段を使って美咲の心を手に入れてみせる。美咲はいつも通り、俺を避けていればいいよ。一ヶ月後、美咲の気持ちが俺に傾いてなければ、潔く身を引くから」


「本当に?一ヶ月後には、私と関わらないでいてくれるの?」


「もちろん。学校で会っても家で会っても、他人だと思ってもらっていい。俺からは一切声をかけないから。ただし、美咲が俺の事を少しでも好きになっていたら、その時は一生離してなんかやらないから、そのつもりで」


 端整な顔でニヤリと笑われて、ゾクリと背筋が凍った。


 これから、晴斗に追い回される生活が始まるのだと思うと、既に挫けそう。

 でも、一ヶ月我慢すれば、晴斗が帰ってくる前の平和な生活が戻ってくるどころか、私は晴斗から永遠に解放される?


「分かった、やる!」


「本当に?」


「うん。望むところ!私は何年も、晴斗の事が嫌いだったんだから、一ヶ月で気持ちなんか変わるはずないし」


 トラウマレベルで嫌いな晴斗を好きになるなんて、明日地球が滅亡したってあり得ない。

 それにこれは、私をおもちゃにする為の晴斗の単なるお遊び。

 晴斗の気まぐれで始まっただけなんだから、一ヶ月もつかどうかも分からない。

 強気な態度で避け続けていれば、途中で気が変わってくれるかも。


「ふぅん、大した自信だね。その言葉、ちゃんと覚えておいて?」


「晴斗の方こそ、やるからには約束だけはきちんと守ってもらうからね」


「分かってる。覚悟はいい?」と、晴斗は笑みを深めた。


「それじゃあ、ゲームの始まりだね」