深い意識の底から、そっと目を開けた。


 あ、れ、、

 ここは…?


「目が覚めた?」


 声の方へ視線を向けると、晴斗が美咲を見てニコリと笑っていた。


「きゃぁぁぁ!!」


 ベッドから跳ね起きる。

 額に張りついていた、冷えピタシートが半分剥がれた。


「わ、私の部屋に何でいるのっ!?」


 美咲の叫び声を聞いて、晴斗は驚いた顔をした。

 それからクスクスと可笑しそうに笑う。


「ここは美咲の部屋じゃないよ?覚えてない?屋上で倒れたんだよ。ここは保健室」


 そっと周りを見渡せば、確かにここは学校の保健室だった。

 薄いカーテンの隙間からは、赤い夕日が差し込む。


「軽い熱中症。あんなところにずっといたら、確かにそうなるよね…」


 晴斗はベッド脇の丸椅子に座っている。


「晴斗が私をここまで運んだの?」


「そうだよ」


 腕の中のフワフワとした優しい心地。

 あれは、晴斗に運ばれていたからなんだ。


 何たる失態……と、愕然と肩を落とした。


「嫌そうな顔してるね。倒れる美咲を、見て見ぬフリをすれば良かったかな?」


「っ……」


 俯いて首を横に振ると、「ごめん」と、晴斗が謝ってきた。


「屋上に来たときから、誰かがいる気配はしてた。もっと早く声をかけてあげてたら良かった…」


 何で、晴斗が謝るの?

 私があそこにいたのも、熱中症で倒れたのも晴斗のせいじゃないのに…。


「全部の私の自業自得なんだから、謝らないでよ…」


 晴斗に気付いてもらえていなかったら、私はどうなっていたんだろう…。


 場所は放課後の屋上。
 
 しかも、人目につかない建物の裏。


 倒れた後も誰にも気付かれずに、きっと私はそのまま…。


 何日か後に、ミイラになって見つかる自分を想像して、ゾッとした。


「そ、それから、その、ありがとう…。助けてくれて…」