「先輩、特別ついでに一つ、教えてもらえませんか?」
「ん?」
「先輩の好きな人、私だけにこっそり教えて下さい」
「それは、さすがに出来ないな」
「私、口は硬いんです。絶対に誰にも言いません。先輩と私だけの秘密にしますから」
彼女は晴斗に、可愛く片目をつぶってみせた。
「奈々には敵わないな」と、晴斗は苦笑する。
「それじゃあ、教えてくれますか?」
「いいよ、と言いたいところだけど、最初から誰にも教える気はないよ」
「そんなぁ…。どうしても駄目ですか?」
晴斗が笑顔で頷くと、彼女は分かりやすく肩を落とした。
「分かりました、諦めます。でも、先輩?片思いってどうして分かるんですか?もったいないですよ。先輩みたいな人から告白されたら、誰だってオッケイしちゃうのに…」
晴斗はクスクスと笑って「ありがとう。そう言ってくれて」と、彼女に礼を言った。
「そろそろ戻ろうか…」
「そうですね。部活が始まりそう。それじゃあ先輩、グラウンドで…」
吹っ切れたような笑みを浮かべて、彼女が屋上を後にする。
美咲がフゥッと、額の汗を拭った瞬間____
「いつまでそこで隠れてるの?」

