「だから、そんなふうに泣かなくたっていいんだよ」と、晴斗は優しく囁いてくれる。
「晴斗…」と、美咲はホッと息をついた。
「だけど、沢山嫉妬してる美咲も見てみたいかも」
「えっ」
「今までは俺の想いの方が強かったから、美咲は逃げてばかりだったでしょ?たまには俺も美咲に追いかけられたい」
「…っ」
晴斗の思いがけない発言に美咲は夢から覚めたような心地になった。
私だって真由ちゃんの存在を知り始めた頃から、胸の奥がモヤモヤしてずっと苦しかった。
雷の夜に電話をしてきた時も、カフェで腕を組まれて現れた時も、立派に嫉妬した自覚がある。
あんな胸を刺すような想い、出来ればもうしたくないのに何でそんな意地悪を言うの?
「晴斗を追いかけてる子なんて他にも沢山いるよ?だったらその子達でいいじゃない」と、思わず後ろをむいてしまった。
これがもう、立派な嫉妬だと気付いてるけど素直になれない。
晴斗を好きになるって事は、こんな可愛くない感情とも付き合っていかなきゃならないのに。
すると、後ろから抱きしめられた。
「そんなに拗ねないで」と耳元で囁かれる。
「冗談で言ったのに、こんなに可愛い反応されるなんて思わなかった」
「…本当に冗談?」
「うん」
「本当?」
「本当だよ。信じられない?」
「だって、学校一人気の晴斗が、本気で私を嫉妬させようとするなんて、私、ストレスでハゲちゃってもおかしくない事なんだから」
「何それ、大袈裟」とクスクスと笑われた。
「大袈裟じゃない。晴斗は事の重大さ、分かってないんだよ」
「美咲の方こそ分かってない」と、唇を塞がれていた。
そして、すぐに離され、真っ直ぐ見つめられた。
「俺が美咲をこんなに好きな事」
「晴斗…」
「今だってこのまま離したくない。こんなに可愛い美咲と、一分一秒無駄にせず、ずっとくっついていたい」
耳を食むように噛まれて、甘い音が溢れた。
「毎日こうしてキスをしてたら、不安になんてならないよ」と、もう一度唇を繋げてくる。
次第にキスに深さが増して、互いの息が上がる。
後ろから抱きしめていた晴斗の指が、私の身体のラインを絶妙な力加減でなぞっていく。
熱くて、身体中が疼く。
晴斗にもっと触れてもらいたくて、無意識に晴斗の指に手を添えた。
「…っ、晴斗…」
晴斗が欲しい。
心だけじゃなくて、身体も全部欲しいよ。
「…キスだけ?」
潤んだ瞳で見つめれば、晴斗は理性の糸が焼き切れる寸前のような、苦しげな顔で私を見つめていた。
その艶やかな色香に、ドキドキが加速していく。
晴斗は私の髪を耳にかけると、その耳元でそっと囁く。
「ベッド、行こ…」

